多言語サイトとは、その名の通り複数の言語に対応したWebサイトのことです。
近年、日本に訪れる外国人の増加や企業の海外進出、越境ECの拡大によって、海外の外国人に向けて多言語化するサイトが増えてきました。
さらに昨今のコロナ禍では、日本で暮らす外国人が情報を収集しやすい環境整備のため、政府や自治体のサイトが多言語対応を拡充したり、国内の経済活性化のために多言語化に力を入れる企業も出てきています。
実際にどのような業界が多言語化に力を入れているのでしょうか。
多言語化に力を入れている業界とは?
「サイト良くして委員会」では、市役所・区役所、自治体も含めた100業種において、Webサイトを多言語対応している割合の高い業界を調査したところ、以下の10業種が高い割合でサイトを多言語対応していました。
多言語化に力を入れている業界
1. 市役所・区役所
2. 大学・大学院
3. 自治体観光
4. 製薬会社
5. レンタカー
6. シェアハウス
7. 美容整形
8. 宿泊
9. 高速・夜行バス
10. 健康食品
※参照元:data maison
集計期間2021年7月1日~7月31日の調べ
1番多言語対応している割合が多かったのは、「市役所・区役所」のサイトでした。
言語は基本的に英語、中国語、韓国語に対応しており、それ以外の言語を使用する在留外国人が多い地域では、他の言語も対応しています。
対応言語が多い例として、東京都江戸川区のホームページがあります。従来は、英語、中国語、韓国語に対応していましたが2021年5月より108か国語に対応を拡大しました。
これは、区内に在留する外国人が使用するほぼ全ての言語をカバーしていて、災害時や新型コロナウイルス感染症関連の情報発信の速報性や正確性を高める目的としています。多言語化対応の拡充は、江戸川区だけでなく全国の市役所・区役所のホームページで見られる傾向です。
2番目に多かったのが「大学・大学院」です。
多言語化することで、日本語が苦手な外国人留学生やその保護者、海外教員にも迅速に情報を届けられ、サイトの便利性が向上することを目指しています。
また、日本が少子化の傾向があるため、将来海外からの留学生を獲得するための戦略の1つにもなっているようです。
3番目に多かった「自治体観光」や5番目の「レンタカー」、8番目の「宿泊」、9番目の「高速・夜行バス」は、旅行関連のサイトです。
2019年まで増え続けていた訪日観光客の受け入れ環境の整備としてサービスやカスタマーサポートの案内を多言語化した結果と言えます。
多言語サイト作成のポイントとは
では実際に多言語サイトを作成するとしたら具体的にどのような点に注意すればいいでしょうか。ここでは5つのポイントについてご紹介します。
多言語切り替えボタンをわかりやすい場所に設置する
多言語サイトに言語を切り替える表示があるのを見たことはありませんか?「English | 한국어 | 簡体 | 繁体」のような表示です。
ヘッダー部分に各言語を選択できるようなリンクがあると、どのページから入ってもわかりやすいです。
言語を選択する表示のアイコンに国旗が使われることがありますが、国旗の表示については注意が必要です。
日本だと英語=アメリカ国旗をイメージしがちですが、英語はイギリスやオーストラリア、ニュージーランドでも母国語として使われており、自分が使用している言語を違う国の国旗で表されることに不快感を抱く人もいるからです。
気持ちよくサイトを利用してもらうためにもアイコンに国旗を使用するのではなく言語で表記したほうが無難でしょう。
言語ごとにページを分ける
言語の表示を分ける方法もあります。サイトを異なる言語で表示する際は、言語ごとにページを分けて異なるURLを使用しましょう。
一つのページの中で「日本語」と「英語」など複数の言語で表記しても、GoogleはページのURL単位で言語を認識するため、そのページの主要な言語しか認識されません。
検索エンジンに認識されやすいサイトにするならば、サイトの構造を考える段階で対策が必要です。
言語ごとに異なるURLを使用する
多言語サイトでは、言語ごとに異なる URLを使用する必要があります。URLの最後についている日本なら「.jp」、アメリカなら「.us」などの国別ドメイン「ccTLD」は使用できる国や地域が限定されていますので、どの国の人に見てほしいサイトなのかターゲットが明確になります。ただし国別ドメインは、ターゲットの変更ができないというデメリットもあります。
1つのサイトで言語ごとにURLを切り替えるサイトにしたいときは、国や地域が限定せずに使用できる「.com」「.net」「.org」のような汎用ドメイン「gTLD」を使用するとよいでしょう。
そのうえで、例えば「language.com/jp/article」「language.com/en/article」のようにサブディレクトリで国や言語の表示を分ける方法もあります。
文字数の増減に対応できるデザインにする
日本語のサイトを他の言語に翻訳したときに起きるのが文字量の問題です。
日本語のサイトでバランス良く文字を表示できていたとしても、翻訳で文字量が増減してしまうと思わぬところで改行されてしまったり、背景に図形や画像を敷いていた場合は、その枠内に文字がおさまっていたのがはみ出してしまったりと表示が崩れてしまうことがあります。
そうならないためにも、Webサイトを作る前に文字量の増減がレイアウトに影響しないデザインを考えておきましょう。ちなみに日本語を多言語で表示した場合の文字量の増減は次のように変化します。
- 日本語
多くのウェブサイトが複数の言語をサポートしています。 - 英語
Many websites support multiple languages. - 中国語(簡体)
许多网站支持多种语言。 - ドイツ語
Viele Websites unterstützen mehrere Sprachen. - イタリア語
Molti siti Web supportano più lingue. - フランス語
De nombreux sites Web prennent en charge plusieurs langues.
対象となる国に合わせた表現にする
サイトのデザインでは同じ色を使っても国によって受ける印象が違ってきます。
例えば「赤」は中国では情熱や献身などポジティブなイメージがありますが、アメリカやヨーロッパでは、警戒や共産主義のイメージがあります。
「黄色」は日本だと幸福や活発なイメージがありますが、アメリカでは臆病者のイメージがあります。サイトのターゲットとなる国が決まっている場合は、その国の好みに合った色やデザインを選ぶようにしましょう。
コンテンツの並び順を日本語の場合は五十音順に並べることが一般的ですが、英語ではアルファベット順が一般的なので、日本語のコンテンツを単純に英語に変換するだけでは、ターゲットとなる国の人にとって探しづらい表記になってしまいます。
また、地図を載せている場合も日本だと日本を中心に配置した地図を載せていますが、ターゲットとなる国で表示するページではその国を中心とした地図に変更する必要があります。
ちなみに多言語サイトとは
Webサイトのほとんどは、母国語で作られていますが、多言語サイトは、伝えたい地域の言葉に翻訳したページも掲載しています。日本の人を対象にしたサイトは日本語で作られていますが、そのサイトを英語圏の人にも見てもらいたいなら英語に、中国圏の人に見てもらいたければ中国語に翻訳するなどです。
サイトが多言語に対応している場合、ユーザーが見つけやすい場所に言語を切り替えるためのリンクがついているなどの特徴が見られます。
また、多言語サイトは対象となる外国人によっても違いがあります。訪日外国人や在留外国人、海外在住外国人では必要する情報が違ってくるからです。
例えば在留外国人に災害時の避難情報を伝えるなら、正確で理解しやすい翻訳が求められますし、海外在住の外国人にECサイトで商品を紹介するなら、外国人にとって魅力的に感じられるコピーを掲載したりデザインの好みを現地の嗜好に合わせるなどの工夫が必要になるでしょう。
訪日外国人への認知度を高めたいと考える宿泊施設や飲食店は、多言語対応することで自社サービスの魅力を発信することができます。
まとめ
外国の人から見てもわかりやすいサイトや利用しやすいサイトするには、ただ単に日本語のサイトを翻訳するだけではなく、デザインをその国の嗜好に合わせたり、その国で表示されやすいドメインで設定してすることが重要です。
多言語サイトを作成するときは、これらのポイントを意識して海外の人からみても共感できるWebサイトにしましょう。
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